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渡英して思ったこと(10/9)

予定の時刻に無事帰国。疲れた。
今回感じたことをまとめておく。

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○英国の教育の情報化の政策はなぜうまく動き,日本はなぜ遅々として進まないのか。渡英するたびにこれを悩んでしまう。英国では,行くたびに確実にIWBが整備され,デジタルコンテンツを使った授業が普通に実施されている。教員向けのICT研修はすでに完了,機材導入の予算も,国が用意した以上に各学校で使われている。どこの学校も,児童生徒数に対して3人に1台ぐらいのコンピュータ導入率に落ち着いている。ロンドンの学校ではIWBが入っていない教室を見ることはできなかった。学校長向けの研修もこれで終わりだという話になっている。
では日本は…と振り返ると,2005年度までの目標すら達成できていない現状がある。行くたびに開いていく差を見るたびに,ぼくは焦るような気持ちになる。

○この現状を,学校でも現場でも「文部科学省が悪い」というステレオタイプな言い方で片付けようとする。しかし事はそう簡単じゃないことは日本教育工学会のシンポジウムで述べた通りだ。「地方の時代」を迎えている日本,今や世間では常識的なICT活用と認識されている中,国は一般財源として地方財政措置をし続けている。しかし,各地方ではそのお金が教育の情報化に十分に回らない。教員は県が雇用し,学校は県や市区町村が設置しているのだから,導入するもしないも,地方のビジョンに依ることになる。

○ICT活用の効果が十分に認識されていないのではないか。この指摘は当たっていると思う。では,どうやったら「十分に認識」されるのだろうか。教室でのICTが学力を向上させるという実証はすでに終わっている。「そんな研究手法はおかしい」という意見を出す研究者はいるけども,その人たちが代わりに教室でのICTが学力を向上させるという実証をしてみせるわけではない。

○学校現場で使おうと思った時に機材がない。これも現実だ。機材がないところで実践はできないから,有効な実践も生まれるはずがなく,いい実践を見たことがない人は必要感を感じない。「教育にICTなんて,どうせ使わないだろう?」という理由で予算要求が通らない。最大の問題は,その悪循環が続くことだ。

○トップダウンで示してみせれば,認識が変わるような気がする。しかし今や国がトップダウンで行うことができないのが日本という「国のカタチ」だ。今は,各自治体ががんばるのを応援するしかない。よい応援グッズを揃えるような努力が,さしずめ今のぼくにできることか。そんなことを考えた。

○ぼくが知る限り,文部科学省にも,地方の教育委員会にも,学校現場にも,財団やNPOにも,関連企業にも,マスコミにも,そして大学にも,教育の情報化をよい形にしたいとがんばっている人たちはたくさんいる。なぜ空回りするのかを考えた時,単純な「あるべきだ論」や,他立場への批判では,このままの状況は変わらないように思える。批判よりもまず,自分のできることから粛々とやる。それを表明する。手をつなぐ。現状をよく認識する。単純だけど,そんなことからまた一歩一歩始めてみるしかないなと思った渡英だった。

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コメント

某私立中学高等学校で事務職員をしている関です。
教育現場に来てみて、「先生に時間がない」という現実を知りました。それは、先生が「個」で仕事をしていることに原因があるような気がします。「手をつなぐ」ということが大切ですね。職員も授業に協力できるといいですね。
そして、ICTの活用の促進は、第一に「校長先生のリーダーシップ」ではないでしょうか?プロジェクター1台でも、充分‘授業改善’をスタートできますよネ!

投稿: 関 幸一 | 2007年10月11日 (木) 05時04分

いつも読ませていただいています。
北海道で教員をしているものです。

「批判よりもまず,自分のできることから粛々とやる。それを表明する。手をつなぐ。現状をよく認識する。」

ここのところとてもよくわかる気がします。
ICT活用をやっている人ややってみたい人はいるのだけれど、それらが上手くつながっていないという印象です。

一方、実はけっこう影響力がありそうな、官主催の研究会などでももっと取り上げる必要があるように感じています。
初任研や十年研、教育主催の夏休みの研修会など、手を挙げた人以外にも半ば強制的に触れさせる、体験させる場があって、初めて気づく人も少なくないように思います。
上からパンフレットの類はよく来るようになりましたが、実際に触れさせるような研修はワード・エクセル・パワーポイントで止まっている感じです。
これって他府県は状況が違うのでしょうか。

投稿: 山本 | 2007年10月10日 (水) 04時41分

久々のコメントです。いつも応援ありがとうございます。

英国のお話興味深く読ませていただきました。お疲れ様でした。日本でICT活用がなかなか進まない理由、私もいつも不思議でならないのです。

私は、日本の教育現場に「生産性の向上」「合理性の追求」という考え方が非常に希薄であることが一因であると思われますがいかがでしょう?

工場での生産性の高さに較べ、ホワイトカラーの生産性が極めて低いのが日本の特徴と聞きました。

我々の文化の弱み…なのかもしれません。

私も自分の持ち場でこの空気を変えるべく、奮闘し続けますよ。

投稿: 新保 | 2007年10月 9日 (火) 23時56分

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